病気や治療のお話
C型肝炎のはなし
HCV(C型肝炎ウイルス)は肝臓に病気を起こすウイルスであり、わが国では180万人のHCV感染者がいるといわれています。HCVは血液を介して感染し、一部は急性肝炎を発症し、感染例の約70%で慢性肝炎へと移行します。いったん慢性化するとウイルスの自然消失はほとんどありません。およそ20~40年で肝繊維化が進行するため、発がんの問題も含めて臨床的・社会的にきわめて重要な疾患です。
症状…C型肝炎のみでは、症状はほとんど見られませんが、他に免疫疾患や胃腸疾患が合併することがあり、それに伴って食欲不振や全身倦怠感といった症状が出現することがあります。
治療法…インターフェロン治療(皮下注射)もしくは、インターフェロンと抗ウイルス剤(内服薬)の併用治療が主流になっています。ウイルス量の減少の程度、GOT値、GTP値の改善度を指標に約1年間継続します。
最近の話題…HCV感染症に代謝性疾患としての性格があり、脂質代謝異常が深く関わっており、動脈硬化や全身における炎症や線維化の悪化の要因と考えられています。
食事療法…高カロリー食、高たんぱく食が食事療法の主流といわれていましたが、最近は逆に高カロリー食が、インスリン抵抗性を悪化させ肝線維化を速めるといわれています。
また、コーヒー(カフェイン)や緑茶(力テキン類)などの常用飲料が肝炎などの肝疾患に対し、肝臓を守るように働く可能性が見い出されており、今後の注目すべき点だと思われます。
なにか気になる点がありましたらお気軽にご相談ください。
内科医長 岩田 徳和
(日本消化器内視鏡学会専門医 日本消化器病学会専門医)
盲腸のはなし
急性虫垂炎は俗に「盲腸」と呼ばれ、経験する人が多いことから軽い病気のように思われがちですが、現在でも重症例では長期入院になるケースもあり、早期発見・早期治療が重要な病気です。
盲腸、虫垂の位置 : 盲腸とは、右下腹部にある大腸の一部のことで盲端になっている部分の名前です。その盲腸の先端に紐のようにぶら下がっているのが「虫垂」という部分で、長さは5~10cmといわれます。虫垂炎とは、この虫垂が炎症を起こして、腫れたり、膿がついたりする病気です。
原因:はっきりした原因はまだわかっていませんが、炎症のもとになるのは主に大腸菌など腸のなかに存在している細菌。これに不規則な生活や過労、暴飲暴食などが重なり引き起こされると考えられています。
症状:典型的な症状として右下腹部痛と発熱があります。食欲低下、嘔吐、下痢などの胃腸炎のような症状が強く見られる場合もあります。虫垂は右下腹部に位置しているので虫垂に炎症があると右下腹部に強い痛みを覚えます。病状の進行と共に、最初はみぞおちのあたりに痛みが起こり、次第に右下腹部に移るのが一般的ですが、お腹全体が急に痛くなったり、へそのあたりが痛くなったりする場合もあり、人によって様々です。時闘が経つにつれて右下腹部の痛みがはっきりしてきて、歩くと響くようになることもあります。
急性虫垂炎と紛らわしい代表的な病気:
1.大腸憩室炎:大腸の壁に小さな部屋ができて、そこに膿が溜まったりして炎症を起こす病気です。吐き気や嘔吐はないことが多いですが、虫垂炎と同じような右下腹部痛があるので区別するのが難しい時があります。原則的には手術ではな抗生剤などの点滴で治ります。
2.女子付属炎:卵巣や卵管の炎症でも、虫垂と同じような右下腹部痛が生じるので、女性は意識しておく必要があります。
虫垂炎の程度:
1.力タル性虫垂炎(第一段階):最も軽度な炎症で、虫垂が少し腫れて充血している状態です。
2.化膿性虫垂炎(第二段階):炎症がもう少し進んで、虫垂の内部あるいは表面に膿を認める炎症です。
3.壊疽性虫垂炎(第三段階):更にに炎症が進んで、虫垂の壁が腐ったり(壊死)破れたり(穿孔)している状態です。
治療法:急性虫垂炎の治療は、緊急手術が原則です。何らかの理由で手術ができない時には、強力な抗生物質を投与して炎症を緩和させることもあります。俗に「ちらす」と呼ばれる処置です。しかしこの場合、再発の危険があるので、症状の緩和後も充分な注意が必要となってきます。
入院期間:急性虫垂炎の場合、普通5~10日間程度です。しかし、第三段階まで進んでいると絶食や入院の期間が長くなるだけなく、腹膜炎を起こして生命の危機に陥る場合も出てきます。診断がつけば早期に処置、手術をすることが大切です。腹痛など気になる症状がある方は我慢しないでお気軽に当院まで診察にいらしてください。
手術部長 池田慎一郎
(日本外科学会 専門医)
消化管診療における ~内視鏡検査と胃バリウム検査の違い~
最近当院に導入された新型CT(マルチスライスCT)は台に寝ているだけで、アッという間に全身の断層写真が撮れてしまいます。それはまるで人体の解剖図を見るが如く、肺や肝臓などが鮮明に写し出されます。というのも、これらは“かたまり”の臓器だからです。一方“くだ(パイプ状)”の 臓器である食道、胃、腸はこの最新CTでも中をよく見ることはできません。胃腸の病気を的確に診断するには、やはり内視鏡(カメラ)やバリウム検査が不可欠なのです。でも、CTに比べると、どちらもチョットつらくて敬遠されがち…。しかし、たとえば胃癌は今でも日本人に一番多い癌なのに 死亡率が減少しているのは、世界でもトップレベルのこれら検査技術により、病気を早期のうちに発見することで治癒する患者さんが増えてきたからにほかなりません。
前置きが長くなりましたが、では胃カメラとパリウム、どちらがよいのでしょうか?それは検査の目的によります。まず検診的(おおまかに病気の存在をチェック)な意味合いであればどちらでもよいでしょう。その場合、検査の“つらさ”も選択のポイントかもしれません。力メラに伴う喉の違和感や嘔気は確かにつらいもの。不安感がさらにそれを助長することもあり、 内視鏡スタッフの説明と声がけで少しでも緩和できるように努めています。バリウム検査では、バリウムや 発泡剤(胃を膨らませる薬)を飲めない方、検査後に便秘で苦しむ方がいらっしゃいます。苦痛の内容にも 少々個人差があります。
そして、より精密な検査を目的とした場合、メリットには違いがあります。力メラの優れている点は、食道や胃の全域を観察でき、病変の色や形を直に見ることができることです。パリウムでは描出の難しい部位があり、また色調による評価ができません。早期癌でも色の変化が目立つもの、出血、胃炎、逆流性食道炎などの診断には力メラが有利といえます。そして何よりもカメラの大きなメリッ卜は組織を採取(「生検」といいます)できること。なぜなら、病変が良性か悪性であるかの“最終的な審判”は生検による病理診断にゆだねられるからです。ただし力メラや生検でも診断が難しい病気(スキルス胃癌など)もあり、これらはバリウム検査が診断の決め手になることがあります。 また、癌の深さを評価する場合もバリウム造影の有用性が認められています。
副院長・内科 吉田幸成
(日本消化器病学会 専門医・指導医)
(日本消化器内視鏡学会 専門医)
(日本内科学会 認定医)
大腸ポリープについて
大腸の役割は水分を吸収して、固形の便を作り肛門まで運ぶという単純なものです。しかし病気の数は多く、便秘、過敏性腸症候群などの働きの障害、できもの(癌やポリープ)、感染性腸炎、憩室炎、潰瘍性大腸炎などの炎症、痔などバラエティーに富んでいます。 今回は、大腸ポリープ・癌についてお話したいと思います。

このような小さな異常を見つけるのに、大腸力メラが適しています。しかし大腸内に便が残っていると、カメラ挿入の邪魔になって検査に時間がかかったり、苦痛が生じたりします。何より見逃しの原因となります。検査を楽に受けていただくためにも、腸を洗浄する液を飲んでいただくなどの前処置が大事になります。もし、便秘が強いなどの症状がある方は前もって教えていただければ対応できます。大腸癌は、かつては欧米人に多いといわれていましたが、我が国でも食事を含めた生活スタイルの欧米化(高蛋白、高脂肪食)に伴い、大腸癌にかかる率は増加傾向にあります。男女差はなく、年齢とともに増加し、中・高齢者に多くなります。
しかし、5~10%程度は30歳代、40歳代の若年者にも発生し、全年齢を通じ遺伝的素因が原因と考えられ る割合も5%くらいあります。家族や血縁者に大腸癌の方がいる場合、中・高齢者の方は一度大腸カメラを受けることを勧めます。
幸い大腸癌は、癌のなかでは治しやすく、早期癌ではカメラを用いて治療できますし、外科的手術が必要な状態でも他の癌に比べ術後の経過は良く、早期発見が大事です。気軽に外来受診していただければと思います。